日本と中国のパスポートの表紙は赤、韓国、インドネシアは緑と国によって色が違います。背景も日本は富士山、アメリカは鷲です。さてパスポートは国が発行するものだけではありません。
入管法第2条 旅券の定義には以下のような記述があります。
五 旅券 次に掲げる文書をいう。
イ 日本国政府、日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券又は難民旅行証明書その他当該旅券に代わる証明書(日本国領事官等の発行した渡航証明書を含む。)
ロ 政令で定める地域の権限のある機関の発行したイに掲げる文書に相当する文書
「権限のある国際機関の発行した旅券」の例として 国連が発行する表紙がブルーのパスポートはレセパセLaissez-Passerと言い、旅券として使えます。国連の職員が業務上で国境を超えるときのみ使用できるようです。あまり行政書士は見る機会がないですが。
難民の方は本国にいられなくて他国に逃げてきたので、本国でパスポートは発行してもらえません。そこで他国が旅券に代わる難民旅行証明書を発行します。
ロの「政令で定める地域」とは日本が国として承認していない国、現在は 台湾並びにヨルダン川西岸地区及びガザ地区 です。台湾は以前国として日本は認めていましたが、 1972年、当時の田中角栄首相が 中国と国交回復した際に政令で定める地域ととなってしまいました。
行政書士になって初めて知ったことですが、歴史はいろいろなことを考えさせられます。
2024/8追記
川内有緒氏の「パリの国連で夢を食う」にLaissez-Passer情報がありました。
Laissez-Passerは「通過させてあげて下さい」という意味だそうです。
しかし、アメリカ、フランス、ロシアの3国では国連パスポートは使えないそうです。
常任理事国の3国でレセパセが使えないとは、国連の意義って・・と考えさせられます。
また有緒氏の調査によると同僚の半数ほどが2つ以上パスポートを持っているとのこと。
戦争やクーデター、内戦等を経験していると1つのパスポートだけでは不安、ということらしいです。
私達が日本のパスポートのみで何ら疑問をもたないのは、幸せなことかもしれません。
ちなみにこの本、有緒氏が国連で働いた経験を本にしたものですが、国連やパリってこんななの?!と良くも悪くもイメージと違うところあり、面白くお勧めです。
2014年発行なので、今は違うところもあるかもしれません。
例えば国連は
・願書を出して約2年後に面接の連絡がきて、面接から結果が出るまで3か月から半年かかる
・面接に必要な旅費は国連持ち
・福利厚生が手厚い。タバコ、車、お酒などの一部が無税で買える
・カフェテリアはコック帽をかぶったシェフがいて、市価の半額くらいで食べられる。ビーフシチューなど豪華(でもあまり美味しくない)。
・有給は月に2,5日支給されるので、3カ月で既に7、5日使える。それと別にクリスマス休暇、宗教休日などあり。
・パリは国連と同じ建物内に国連公用語の語学教室があり、安く勤務時間に受講可能。
ちなみに国連公用語は英、仏、中、露、スペイン、アラビア語
・いつでもどこでもイベントやパーティが開かれているースタッフデイ(職員慰労の日)、国連オリンピック(国連組織対抗)など。
世界から優秀な人が集まっているのに、効率より各国の合意重視のため、なかなか自分のペースで仕事をするのは難しそうです。
パリに関しては
・パリの建物は大きく旧建築と新建築(第二次大戦以降に建てられたもの)があり、旧建築は上下水道が無い時代に建ったものもある。これぞパリ、という建築だがボロい。エレベータ―は6,7階でも無いのが普通。
・ビルを不法占拠したアーティスト達が、ビルのアトリエを一般公開し、観光名所となり、長い裁判の末、半永久的にアトリエを構える権利を取得。弁護士費用は作品で払った。もともとの大家への補償数億円は税金だけれど、パリ市民はそれを歓迎した。
・6/21は音楽の日。「ホールを去れ、街に出よ」と、プロだけでなく、誰がどこで何のジャンルの音楽を演奏しても良い。事前登録、資格も不要。
当日はがバルコニ-から、路上から音楽や歌が鳴り響き、縦横で音が重なる。ダンスする人、大合唱する人、深夜まで近所迷惑も何もなく、地下鉄も終夜運転らしい。
パリの人が不便を我慢しても景観と歴史を守ること、音楽や芸術に関する懐の深さが半端なく、パリの魅力を作っていることが実感できました!